鮒ずしの話
この句は水原秋桜子先生より当店が頂いた句であります。
大切なお客様を迎えるのに鮒ずしを用意して打ち水をして、今か今かと待っている状況がよく分かります。
滋賀県では各家で漬けた鮒ずしを正月に親戚一同が集まった時に初めて食べる事も多く、最高のもてなし
料理であります。
鮒ずしは昔から滋賀県人のコミュニケーションに大切な役割をしています。
鮒ずしはこのようにハレの場を飾る湖国滋賀唯一の産物なのです。
手間と時間をかけた鮒ずしは最高の珍味でありますと共に滋賀の郷土が生んだ滋賀県人のソウルフードなのです。
又、鮒ずしは乳酸菌を主に、ビタミン各種、カルシウムも大変豊富です。
昔から滋賀ではお腹の調子の悪い時や、体調の悪い時に薬代わりに食べる風習があります。
これも鮒ずしが良質の乳酸菌を豊富に含んだ発酵食品であるので、腸内環境を良くする働きがある体に良い食物である事を古代から知っていたと考えられます。
鮒ずしは湖国滋賀に千年以上昔から伝わる保存食で、先年滋賀県指定無形民族文化財に選ばれました。
近江(滋賀)の鮒ずしは延喜式(927年完成)にも登場します。
稲作技術が大陸からもたらされた時に併せて伝わったのではないかと云われており、米の発酵を利用した発酵食品で「なれずし」とも呼ばれます。
春の産卵期の子持ち鮒の内蔵を取って塩漬けし、夏の土用の頃にご飯に漬け込みます。阪本屋の鮒ずしは貴重な琵琶湖の固有種であります琵琶湖産の天然ニゴロ鮒と地元の近江米のみを使用し、家伝の製法を守り製造しております。
創業時より味を左右する本漬けの漬け込みは店主のみが行う事を守り、量産せず身の丈に合った商売を心掛けております。